説明
2021年4月13日〜25日
ルーニィ・247ファインアーツで開催された
達川清+成田ヒロシによる空間と写真と絵画展のカタログです。
1879年、フランス南部の片田舎であるドローム県オートリーブにおいて郵便配達夫であるフェルディナン・シュヴァルは、 ソロバン玉が重なったような奇妙な形をした石につまずいた。
その石からひらめきを得たシュヴァルは、以来、毎日石を拾いにいき、自宅の庭先に積み上げるようになる。 やがて、シュバルは積み上げたその石で巨大な宮殿のようなものを建設することを始める。フランスの片田舎で暮らしていたシュバルは本物の宮殿を見たことはなかったが、 配達する郵便物に時折見られる世界各地の遺跡や城塞の絵葉書から外国に思いを馳せ、宮殿の建設という着想を持ったとされる。 建設作業は全くの独学により、シュバルただ一人の手によって郵便配達の仕事を終えた後に、着々と進められた。
1912 年、なんと33年の月日を経て宮殿の「建設」は終了。
村人達からは変人の所業として白い眼で見られたが、その不思議な構造物は徐々に知られるところとなり、やがて見物客が訪れるようになった。
現在はフランスの重要建築物に指定され、保存修復もされている。
純粋という言葉が安っぽく聞こえてしまうほどのひたむきさで生涯をかけて生み出された宮殿こそ最高の芸術作品であり、シュバルこそ真のアーティストであるとの賞賛の声は昔も今も変わらず、リスペクトされ続けている。
1990 年代初頭、ふたりの男が日本からシュバルの「理想宮」を訪れた。 ひとりは大判カメラを構えて、ありとあらゆる角度からシャッターを切り、 精緻で情報量豊かなモノクロームフィルムにその迸る情熱の全てを焼き付けようと試みた。
一人は大きなカンバスに向き合い、シュバルの果てしない夢の続きを鮮やかな筆致で描き上げた。
達川清と成田ヒロシのふたりによる、写真、絵画、立体、建築など、
シュバルがそうであったように、過剰なほどの物量で稀有な芸術家シュバルへのオマージュを捧げる展覧会である。

成田さんが右進行、達川さんが左進行の両面表紙です。

青の美しいドローイングは、パリのパステル専門店で当時買い求めたもの


大判カメラでシュバルの宮殿の細部に至るまで克明に記録した達川さんの写真


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